私だけに用意されたようなＸ７３５００気動車を心行くまで堪能した一日
PARISから3時間程度のドーバー海峡に面した夏は海水浴場になるところ。
シーズンオフなので途中のＴＲＯＵＶＩＬＬＥ ＤＥＡＵＶＩＬＬＥ（トゥルービル・ドービル）までは急行で、そのさきはＸ７３５００型
ディーゼルで、一日２，３本のダイヤ。
日本を発つ前にもＳＮＣFのサイトでダイヤを調べて行ったが、現地で時刻表を入手し、再度確認。
PARIS===TROUVILLE-DEAUVILLE====HOULGATE=====DIVES-CABOURG 間の時刻表です。
駅で無料で入手できます。
ＰＡＲＩＳからＴＲＯＵＶＩＬＬＥ−ＤＥＡＵＶＩＬＬＥまではそこそこの本数がありますが、その先が問題です。
なんでこんなところに行くことになったかと云うことは、X73500が海岸沿いの、それも砂がかぶった軌道を走るという
面白い光景をサイトで発見したことがきっかけでした。はたして作戦通りにことが運ぶか最後まで気をゆるせない一人
旅でした。
時刻表の中身ですが、日本のそれと基本的には同じ見方です。
但し、びっくりするのはローカル線の本数の少なさです。一見そこそこの本数があるように見えますが、とんでもありません。
時刻表の最下欄にある [jours de circulation(運行日）]の中の注釈を読むと、１（表の中では■ですが、）から延々27まで
あります。
１：土日祭日を除く毎日運行
2：土曜日と5月8日のみ運行
3：12月22日のみ運行
4：土日のみ運行
5：12月22日と29日そして3月22日
そして4月19日からは土曜日と5月1日と8日のみ運行
6：12月22日と29日、そして3月22日のみ運行
7：7月5日のみ運行
8：日曜と祭日のみ運行
9：12月22日と29日、そして3月22日、4月19日、26日のみ運行
10：毎土曜日、5月1日と8日、7月4日のみ運行
などなど但書が一杯ですから、注意して読まないととんでもないことになってしまいます。
結局私が行った、2008年4月5日は土曜日ですから、HOULGATEに行くにはTROUVILLE−DEAUVILLE発
11：01と14：16の二本しかないと云うことになります。何と！
帰りも２本しか無く、夕方の17：34の最終？に乗らないと、PARISのホテルに帰れなくなります。
ただ乗って帰って来るなら良いのですが、外からお目当てのX73500車両が海岸沿いを走行する風景を撮影するのが
最大の目的ですから、途中で下車して撮って、また乗ってPARISまで帰る、という完全犯罪作戦みたいな綱渡り
行動をとることになりました。
TROUVILLE−DEAUVILLEを11：01でHOULGATEまで行き下車。海岸の撮影場所近くまで歩いて、終点の
DIVES−CABOURGを12：38発で戻ってくるX73500 を待ち構えることにしました。
小雨降る4月でまだ肌寒い海岸でバス停留所の囲みの中で震えながら待つことしばし、来ました来ました、
狙い通り、この日たった１回切りのチャンスを撮影でき、一安心。
どうせその日TROUVILLE−DEAUVILLEへ戻れるのは夕方の最終便しかありませんから、海岸沿いの
レストランで一人だけの御苦労さん会をして、次の行動作戦を練りました。
ビールを呑み、ピザをかじりながら時刻表とにらめっこ。
結局いったん終点のDIVES−CABOURGまで次のX73500で行き、それが最終として折り返すまで、DIVES−CABOURG
で3時間の暇を潰すことにしました。
そこで、またまた拾い物の経験をさせてもらい、旅の思い出が増えました。
いざ出発。4月の朝は夜明けがまだ遅く、8：00近くなってもPARIS、サンラザール駅かいわいは眠そうです。
切符を買うところで、“おめー、フランス語いけるじゃん”とか言われていい気になり、HOULGATE一枚という
発音を“オウルゲイト”と云ったら、“オルガット！”と直されました。
考えたら、昨日は金曜日、週末だったんですね。昨夜からの若者や恋人同士と思われるグループが
名残惜しそうに。いいなー、若いって。
土曜日の朝のためか駅前は閑散としています。
決して高価なものを見に付けているとは思えませんが、自分の主張を効かせた個性的着こなし。
今日の旅はこのBB15000型が牽引する、8：49発のTROUVILLE−DEAUVILLE行き。
模型と違って連結間はこんなに狭い。
運転室を覗かせてもらう。
簡易な行き先表示板。
ＴＲＯＵＶＩＬＬＥ ＤＥＡＵＶＩＬＬＥのホームで、ＨＯＵＬＧＡＴＥ方面行きの発車を待つ。今日は３輌編成の豪華版。
それでも統括制御が出来るので運転手一人だけの運行。切符も車中の機械で買えます。
何気ないしぐさが良いポーズです。
ゆっくり雨の中を坂を登って、そしてゆるく下ると海岸の方に出られます。
こんなところを走るのに最高速度140Km/h（左前方に赤字で表示）の車両はもったいないです。
程なくHOULGATE到着。駅にも周辺にも全く人気を感じない静かで立派な駅舎の無人駅でした。
DIVES−CABOURGへ向けて出発していきました。勿論単線。
駅舎です。
レールは上面がかなり摩耗しているようです。枕木も年季が入っています。
駅から徒歩で海岸まで10分ほど。今はオフですが観光地らしい雰囲気があります。
10分程度歩くと海岸沿いに踏切が。江ノ電の雰囲気。
待つ事小一時間、来ました来ました。先ほど乗った３輌編成がＤＩＶＥＳ ＣＡＢＯＵＲＧから帰ってきました。本日これ一回きりのシャッターチャンス。
枕木がすっかり砂に埋もれています。
踏切で車が停車。砂に埋まった線路を行く近代的なデザインの車両。洒落た街並み、海、砂浜、なんとも面白い光景です。
こんなに砂が！ここから緩やかに勾配を登ってHOULGATE駅に向かいます。
立った一回きりのシャッターチャンスを何とか生かせてホッとしました。
近所のレストランで一人祝杯。そして、今日の残りの行動予定を立てます。
レストランの向かい側には不動産屋さんがあって、物件を物色する人が。
一度ＨＯＵＬＧＡＴＥ駅まで歩いて戻り、次の列車で行き止まり終点のＤＩＶＥＳ ＣＡＢＯＵＲＧまで行くことにし、その日の最終で
TROUVILLE−DEAUVILLE駅に戻ることにしました。もっとも、それしか列車がありませんから他に選択肢がありません。
HOULGATEの町には瀟洒な家が並んでいます。
分かりやすく食材が陳列されています。
花屋さんも素朴ながら洒落た店先です。
DIVES−CABOURGにつきました。
車掌が居たのですが、結果的にHOULGATEから無賃乗車でした。
そんなことより早く休憩に入りたかったのでしょう。
この列車は3時間後にDIVES−CABOURGから反転し、その日のTROUVILLE−DEAUVILLE行き最終になります。
運転手はドアロックし、「開けちゃだめよ」のシールを貼っていった。私がいたから？
贅沢な気分。
この沿線、唯一駅員がいるところです。一日2本ですから、発車近くなるとどこからかやって来ました。
ＰＡＲＩＳ⇔ＨＯＵＬＧＡＴＥ 間の往復切符しか持っていなかったので、ここからＨＯＵＬＧＡＴＥまでの切符を
買いました。たった二駅先ですが無賃乗車と云う訳に行きません。
“サ・フェ・コンビアン？（料金はいくら？）”
“アヌーロバン”
“？？？”
“アヌーロバン”
“？？？”
ほら、これ見て、と画面で示してくれたのが １．２ユーロ。 “ジェ・コンプリ（分かりました）”と一件落着。
ああ、なんだ“アン（１）・ユーロ・バン（２０）”だったのか。修行が足りませんでした。でも、鼻に掛った優しい
声が良かった。 記念の切符になりました。
こんな鄙びた終点駅です。鄙び過ぎているような・・・。まだ先の方に線路が延びているので、以前はもっと先まで運行されていたようです。
右端に当時のポイント切り替え器が放置されています。可能なら日本まで持って帰りたいところ。
これです！
DIVES−CABOURG駅構内をくまなく探索。秤は昔の名残でしょうか。
近所にあった地図を発見。写真を撮っておきました。
左下に線路が延びて行き、RENAULTなんとやら、という赤字が見えます。どうやら、昔は更に路線がのびていたようです。
HOULGATEの駅は右に線路を辿って行って、線路が右に地図から外れた所辺りになります。
駅構内にあった郵便ポスト？
収集時間が９：００と表示されていますので、今も使われているのかな？
この箱に「新聞を投函するな」とも書いてあります。
さあ、PARISへ帰ります。
といってもDIVES−CABOURGからのお客さんは目の前の席に座っているおばさんと私の二人でした。
とはいえ、晴れてきた海岸沿いを今日の成果を胸にトロトロとしてしまう、気持の良い帰路でした。
TROUVILLE−DEAUVILLEに帰着。
x73500越しに若者の談笑光景を。
平均的な感じのフランスの若者たち。
X73500を十二分に堪能した一日でした。
さあ、PARISに向けて帰ろう。
ついつい、隣の席に勝手にカメラが向いてしまいました。
PARIS周縁部にある安宿で一人お疲れさんパーティ。
